Markov Model to HMM

Hidden Markov Model (HMM; 隠れマルコフモデル)

Markov Modelでは状態を直接観察できて、状態列そのものを信号列とみなす.
Hidden Markov Modelは、状態は直接観察できず、状態からの出力記号だけが観察できて、その列を信号列とみなす.

Hidden Markov Model with Deterministic Outputs (D-HMM; *一般的名称ではない)

まず,状態は観測できないが,各状態に固有の(一意な)記号が出力される場合を考える.
マルコフ連鎖{S,s0,A}に,出力記号集合 Σ,出力関数 {ϕi}を加えた {S,s0,A,Σ,{ϕi}} を隠れマルコフモデル(HMM)と呼ぶ.
・状態集合:S={si};i=1,,N
・初期状態:s0S
・遷移確率行列:A={ai,j}; i,j=1,,N: ai,j は状態siから状態sjへの遷移確率
・出力記号集合:Σ={cd};d=1,,D
・出力関数:{ϕ(i)Σ}; i=1,,N, ϕ(i) は状態iから出力される記号.
状態列 h=(h1,,hT); htS,t=1,,T
出力列 x=(x1,,xT); xt=ϕ(ht)Σ,t=1,,T
の同時確率は状態列だけに依存し、次のように書くことができる(h0=s0).
p(x,h|A)=Tt=1p(ht|ht1)=Tt=1aht,ht1

「隠れマルコフモデル」という用語は,観測できるのが出力列だけで,状態列が隠れて見えないことに由来する.D-HMMでは,同一の出力記号を出力する状態が2個以上あれば,出力列から状態列を確定できないから,「隠れ」マルコフモデルとなる.しかし,同一の出力記号を出力する複数の状態がなければ,実質的にマルコフモデルとなる.

Hidden Markov Model with Stochastic Outputs (S-HMM; *一般的名称ではない)

工学的応用では、各状態には確定的な出力関数の代わりに、以下のような確率的に記号を出力する出力確率を割り当てる.
出力確率関数:E={ei,d=p(xt=d|ht=i)}; i=1,,N;d=1,,D: , ei,d は状態siから記号cdが出力される出力確率.
状態列 h=h1,,hT; htS,t=1,,T
出力列 x=x1,,xT; xtΣ,t=1,,T
の同時確率は、次のように書くことができる(h0=s0).
p(x,h|A,E)=Tt=1p(ht|ht1)p(xt|ht)=Tt=1aht,ht1ext,ht

D-HMM と S-HMM

D-HMMとS-HMMは互いに変換可能である.
S-HMMにおける出力確率関数を,各状態から1つの記号を確率1で出力するように定義すれば,明らかにD-HMMとなる.
D-HMMにおいて,各状態を出力記号によって分割すると,S-HMMに変換できる(練習問題).