Restricted Choice (ベイズの定理)

QJがない9枚フィットの場合のプレイ
###(問題)
North: KT932
South: A654
と持っていて、Aを取ってみたら、 Westが7、EestがQをプレーした。
次に、6を出したら、Wastは8をプレーした。
TでJをフィネスすべきか、Kをプレーすべきか、
確率を計算して答えよ。

###(回答)
ベイズの定理は、条件付き確率の定義式
\[
P(B|A) = \frac{P(A,B)}{P(A)}
\]
を変形することによって得られる、以下の式を意味する。
左辺と右辺で、条件付き確率の条件と結果が入れ替わるところが重要。
\[
P(B|A) = \frac{P(A|B)P(B)}{P(A)}
\]
もし、事象Aが背反な2つの事象、BまたはCが起きた時しか起こらない事象だとすると(BやCが起きても必ずしもAは起きなくても良いが、Aが起きた時には必ずBまたはCが起きている)
\[
P(A) = P(A,B) + P(A,C) = P(A|B)P(B) + P(A|C)P(C)
\]
が成り立つから、
\[
P(B|A) = \frac{P(A|B)P(B)}{P(A|B)P(B) + P(A|C)P(C)}
\]
事象X、Y、Zを以下の様に置く。
事象X:= もともと、Westに8,7、EastにJ,Qが配られていた
事象Y:= もともと、WestにJ,8,7、EastにQが配られていた
事象Z:= 1順目にWestが7,EastがQ、2順目にWestが8をプレイする

これまでのプレイから、元々のカードの別れは、以下の事象X、事象Yのどちらかだったはず。つまり、以下が成り立つ。
\[
P(X|Z) = \frac{P(Z|X)P(X)}{P(Z|X)P(X) + P(Z|Y)P(Y)}
\]
9枚フィットの場合の4枚の別れの確率は、以下の通りだから、
2-2 が40.7%
3-1 が49.7%
4-0 が 9.6%
事象X、事象Yの確率は、
P(X) = 40.7% x 1/6 = 6.78%
P(Y) = 49.7% x 1/2 x 1/4 = 6.21%
だから、一見、Kをプレイした方が良さそうに思える。

念のため、ベイズの定理を使って、きちんと考えてみよう。
プレイがこれまでの様に進んだ時、
実は事象Aがもともと起こっていた確率\(P(X|Z)\)
実は事象Bがもともと起こっていた確率\(P(Y|Z)\)
の2つを比べ、\(P(X|Z)\)が大きければK、\(P(Y|Z)\)が大きければJをプレイしよう!
\[
P(X|Z) = \frac{P(Z|X)P(X)}{P(Z|X)P(X)+P(Z|Y)P(Y)}
= \frac{P(Z|X) \times 6.78\%}{P(Z|X) \times 6.78\% + P(Z|Y) \times 6.21\%}
\]
ここで、 \(P(Z|X)=P(Z|Y)=1\)なら、
\[
P(X|Z) = \frac{6.78\%}{6.78\% + 6.21\%}
= 52.2%
\]
となって、確かにKをプレイする方が良さそうだ。
しかし、問題は、\(P(Z|X) = 1\)が正しいかどうかなのだ。
Q,Jを持っているEastは常にQを1巡目に出すだろうか。もし、ランダムにJ,Qを出すとすると、\(P(Z|X) = 0.5\)となり、
\[
P(X|Z) = \frac{6.78\% \times 0.5}{6.78\% \times 0.5 + 6.21\%}
= 35.3%
\]
Jでフィネスの方がかなり有利ということになるのだ!
\(P(Z|X)\)をどう考えるのか、そこに問題のポイントがある。

実は、上の議論では、7、8をどの順にプレイするかは関係ないので無視しているが、これも考慮して、ランダムにプレイすると考えると、
\(P(Z|X) = 0.25\)、\(P(Z|Y) = 0.5\)
となるので、結果は同じである。